米FinCEN・OFAC、決済用ステーブルコイン発行体に金融機関並みのAML/制裁義務を提案
米国の金融規制当局が、決済に特化したステーブルコインの発行体に対して、銀行と同等の厳格なマネーロンダリング対策(AML)と制裁遵守義務を課す新たな規則案を発表した。米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)と外国資産統制局(OFAC)が4月8日に共同で提案したこの規則は、ステーブルコインが不正資金供与の経路として悪用されるリスクへの対応を強化する狙いだ。昨年成立した「ジーニアス法(GENIUS Act)」に基づくこの動きは、決済用ステーブルコインを伝統的な金融システムの一部として明確に位置づけ、その発行体に銀行秘密法(BSA)の適用範囲を拡大することを意味する。
具体的には、米ドルなどの法定通貨に連動し、主に決済に使用されることを目的とした「決済用ステーブルコイン」の発行体が、金融機関と同様のAMLプログラムと制裁遵守プログラムの構築・維持を義務付けられる。これは、単なる自主的なガイドラインではなく、法的強制力を持つ規制の枠組みとなる。この提案は、4月7日に連邦預金保険公社(FDIC)が発表したリスク管理枠組み案に続くもので、米国当局が暗号資産業界、特に決済機能を持つ安定資産に対して、従来の金融規制を段階的かつ体系的に適用する方針を強めていることを示している。
この規制案が施行されれば、決済用ステーブルコインの発行を手掛ける企業は、顧客確認(KYC)や疑わしい取引の報告(SAR)など、銀行が負うのと同水準のコンプライアンスコストと運営負荷を強いられることになる。業界にとっては事業モデルと競争環境に大きな影響を与える可能性が高い。一方で、規制の明確化は伝統的金融機関の参入障壁を下げ、ステーブルコイン市場のさらなる制度化を促す側面もある。米当局は、金融システムの安定性と犯罪対策の観点から、暗号資産の決済利用に対する監視の網を確実に締めつつある。