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鳥取連続不審死事件・上田美由紀、刑務所内の素顔と「私、怖いですか?」の問い
「私、怖いですか?」。ゴミ屋敷に住む女性の周辺で6人が相次いで不審死した『鳥取連続不審死事件』。その犯人として無期懲役刑に服する上田美由紀が、刑務所内でノンフィクションライターに投げかけたこの言葉は、事件の闇と彼女の内面を象徴する。多くの死刑囚を取材してきた片岡健氏の新著『実録 死刑囚26人の素顔』は、凶悪犯罪者たちの逮捕後の日常と内省に迫るが、上田のケースは、周囲を次々と巻き込んだ不可解な連鎖と、その中心にいた人物の異様な平静さを浮き彫りにする。
事件は、上田美由紀が生活していた住居が「ゴミ屋敷」と化していた環境と不可分だ。2000年代、鳥取県米子市を中心に、上田の知人や関わりのある男女6人が、病死や事故死として処理されながらも、その状況に不審な点が多々指摘された。警察の当初の対応を経て、2012年に上田が逮捕され、裁判では複数の事件に関与したとして無期懲役が確定。彼女は「怖い人」という周囲の印象とは裏腹に、収監後は一見穏やかな態度を見せ、取材者に自らをそう評させるような問いを発した。
片岡氏の取材は、表向きの「素顔」の背後にある、計画的とも偶然の連鎖ともつかない事件の核心に読者の視線を向けさせる。上田の言葉は、彼女自身が自分の与える印象を意識し、あるいは操作しようとしている可能性をも示唆する。この事件は、地域社会に深く根ざした人間関係の中で発生した不可解な死の連鎖であり、単独犯によるものか、あるいはより複雑な共犯関係が存在したのかについて、未だに議論を呼んでいる。刑務所という閉鎖空間で語られる言葉は、事件の全容解明への新たな手がかりとなるよりも、むしろ、解決済みとされた事件が投げかける根源的な「怖さ」の正体について、改めて考える材料を提供している。